Jan 13, 2017

フォローには誰が適任か

■ 二人のフォロー候補者

先日、阿弥陀北稜(初級バリエーション)の後、山頂で、二人の男性にあった。

■ 一人目の男性とのリスク計算例

一人目の男性は、杣添尾根から上がったそうで、横岳から阿弥陀。ピストン。クライミングジムにも通っているそう。

私の頭の中には・・・

 1) 歩き ⇒ 十分そう
 2) 登攀 ⇒ 問題なさそう 
 3) ロープワーク ⇒ だめそう

= 私のフォローに良さそう

という計算が成り立った。

メリット1:平日休み  ・・・凍傷リスク

お勤めは平日休み。土日休みの人には、渋滞と言うリスクがある。厳冬期の雪山で渋滞すると、それだけで、凍傷のリスクが高まる。

メリット2: 岩場の共有

西湖の岩場を知っているか聞いたら、一応知っているがクライミングはしないそう。つまり、一度、西湖の岩場(十二ヶ岳の岩場)へ私が連れて行けば、私のフォローが出来上がる。セカンドにはロープワークは不要だからだ。ただコールが分かってくれればよい。

メリット3: 情熱の共有

ちょうど主稜をやっている大学生が見えたので、主稜の話をしてみたら、向こうもいきたそうにしていた。

メリット4: 確保可能性

主稜だったら支点があるから、セカンドである彼が墜落しても、体重が軽い側、つまり女性の私でも、止められる。

責任について:

山には万が一があるから、リードするほう、誘う方は、相手が墜落した場合も、止められるような相手でないと、山に誘ってはいけない。

■ 二人目の男性とのリスク計算例

二人目の男性は、アイスもするという登山者だった。体格も一人目の男性と変わらない。

だが、私が阿弥陀北稜を終わって、山頂から中岳を越え、文三郎道へ分岐で再会したということは、歩くのは私より大幅に遅い。バリエーションを一本終って歩いてきた私と、一般ルートの彼が同じ時間になるとは、かなりの差だ。

1) 歩き⇒ 不安
2) 登攀 ⇒ 今から
3) ロープワーク ⇒ ダメそう

大丈夫かな、と思ったので、歩きを見るため、前を歩いてもらう。安定性がなく、まだよちよち歩きだった。急斜面を怖がっているため、お尻が引けている。ちなみに私の夫も、そのような歩き方をしている。

滑落というのは、バランスを崩す、という意味だから、体力も、体重も、性差も関係がない。

バランス感覚、あるいは、敏捷性、というようなことだから、関係があるとすれば、運動能力や年齢だ。

(彼が滑落する可能性)と(私が滑落する可能性)を比較すると、私の方が滑落可能性が低い。

ので、トップ交代。この彼はルートファインディングも不安があったようだったので、私が前になって、うれしかったようだった。

山頂を踏んだあと、下りは距離を離すため、私の方が先に降りる。なぜか?滑落する可能性が高いほうが後続だと、巻き込まれる可能性があるから、距離を離さなくてはならない。

大抵の男性登山者は、私より体重が重い。自分の体重より重い物体が上から降ってきたら、軽いほうは必ず巻き込まれてしまうだろう。

私は体重が軽いので、パーティで歩く場合、急斜面では、かならず最後尾を歩くことにしている。

その場合も落ちた場合、先行者を巻き込まない位置を選んで歩いている。後続に体重の重い男性登山者で、歩きが不安定な人がくると、危険を察知して不安なので、先を越させることにしている。

■ 赤岳を歩けるかどうかの考察

赤岳はアイゼン歩行が確実であることが前提となっている山だ。

アイゼン歩行は、クライミングでの墜落と違って、失敗が許されない。転んでしまえば、滑落停止をしない限り、どこまでも滑落してしまう。すってんころりん、立場川だ。

したがってリスクに備えるには

 滑落停止訓練を既に受けていること & 滑落停止ができるような雪の量

が前提になる。雪が少ないと滑落停止技術があっても停止できない。ベルグラアイスのような状態の時も同じ。

赤岳ではロープを付けない。つまり、赤岳での滑落というのは、アイゼン歩行スキルの稚拙さ、の表現である。つまり通常の天候での赤岳で滑落死というのは、実力不足もしくは、アイゼン歩行スキルの過信があったということだ。

赤岳は、一方で、一般ルートである。一般ルートが意味するところ、というのは、

  支点が整備されていない、

という意味だ。したがって、赤岳での確保は、タイトローピングとなる。

タイトローピングは、転ぶ前に引っ張って転倒を防ぐという方法だ。つまり、体重差が重要な確保方法だ。

したがって、私は自分よりも体重が重い人をタイトローピングで確保することはできない。タイトローピングでは・・・私自身が引きづり混まれてしまう。

二人目の彼が転んでも巻き込まれない位置は、前を歩いてもらうことだが、赤岳の下りで、仮に前を歩いてもらったら、歩行自体のスピードが遅くなって、私が不利になる。

山ではスピードは安全につながるのだ。

というわけで、

 1) 私よりも歩くのが遅く
 2) アイゼン歩行が不完全
 3) 体重がより重い人

と歩く場合、一番安全なのは、別々に行動し、距離を離しておくこと、となる。

実は、この3つの条件は、ほぼ全員の中高年男性に当てはまる。

オジサンたちは、若い女性と歩きたがっているが、女性の側は、単独行よりもリスクを抱えることになるから、一緒に歩きたくない(笑)。

■ フリーなら安全

ちなみに、このような条件の人とでも、支点が整備された場所(フリークライミング)なら可能となる。体重が軽い側でも確保ができるからだ。

トップロープで、済ませることができるアイスクライミングなども、同様だ。

したがって、赤岳と言う山を見た場合、アイゼン歩行が完成していない人は行くべきでない。

タイトロープが必要な位だったら、むしろ、支点が整備されたフリーをやるほうが安全なくらいだ。

というわけで、赤岳は登れないけれど、鉱泉でアイスクライミングはできる、という登山者が増えることとなる。

今の時代、確実なアイゼン歩行をマスターするだけの、講習会や下積みを得ることはとても難しいからだ。

ちなみに、今回の阿弥陀北稜で、もっとも自分で自分に感動したのは、この写真を見たときだった。

帰りに時間が余ったので、無名の滝の偵察に行ったときに、ノートレースのところがやっと出てきて、そこを歩いた。

帰りに自分の足跡を見て、キレイだ~というわけだ(笑)。

しっかりとどの足跡もアイゼンが雪面に刺さっている。

ガイド登山の登山者は、昨今見下される傾向にあるが、

このような記事を読むと、

山を分かっている

と言えるようになるためには、

ガイドという山の先輩

の教えが特に必要なのかもしれないと思う。

自分が楽勝で赤岳に登れてしまえば、どのような技術が必要なのか?考えることもしなくなるだろう。






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