Mar 21, 2016

南沢大滝

■ 回収便

火曜に南沢の氷瀑に行った時、回収担当になった。で、ケブラーのスリングを残置してしまった。

回収便は私だったのだが、残置なのかどうか迷うスリングがあり、上から聞いてみたが、声が届かなかったようで、「カラビナのみなのか?」の問いかけに、「そうだ」との答え。しかし、同行者がギアを整理していたら、あるべきスリングがない、ということで、結局、回収に出かけることになった。

どうせ行くなら、と1泊二日の予定・・・が、結局土曜は雨で流れた。突然のテント泊でも、まぁ何とかなる。2名だったのだが、同行者がどうしたいか(小屋泊まりなのか、テント泊なのか)分からなかったので、自宅の2テンと寝袋二つをとりあえず車に放り込み、食事も2人前を用意したが、インスタントラーメンにマカロニ、酒と、もとがそう重くないので、構わなかった。一人テン泊ということになっても、2テンを辞めてツエルトにすればいいし・・・。

結局、雨で流れ日帰りになって良かった(笑)。雨の中の冬のテント泊は2月にやったが、まぁ楽しいこと!テントの中に池ができた。

降雪で道路状況が悪化していることを懸念して、5時小淵沢道の駅としたため、2時起き、3時出発だったが、結局道路の状況が良く、5時には美濃戸口に着いてしまった。同行者とは6時合流

■ 大滝

7時半大滝。


先行パーティは、ぶなと思われる会が、左端に取り付いていたが、表からは見えないライン。

同行者は、佐久アッセントのA木さん。

実は彼は、講習会で講師を務めるほどの実力者。

アイスクライミング歴35年のベテランだ。

ベテランだけに知り合いが多いらしく、後でついた年輩者のペアとも知り合いだったらしい。

左の変わったアックスは、国産のアックスで、たつのおとし子型。

日本人向けにアックス全体の全長が短い。しかも、軽い。

山岳会はどこかなと思い聞くと、無所属と言う。

年輩の人は誰でも会に属しているものだと思っていた・・・(汗)




■ ガイド講習の利用について

この方は何シーズンもガイド講習に通ったそうだ。

有料の講習会は、ガイド講習と言う都合上、安全が確立したゲレンデ(小屋が近いなど)しか使えない。つまり、使えるゲレンデが限られており、アイスを学ぶには、限定的なやり方かもしれない。

例えば、南沢は、ガイド講習に人気があるのは、いつでもひとけがある八ヶ岳で、小屋も開いており、すぐに救援が呼べるから。

でも、小滝なら、ビレイヤーがいれば、一度もガイドと来なくても、普通にトップロープで練習することができる。実際、私はガイドと来たことは一度もない。(ちゃんと支点は自分で作れることが必要だが、支点くらいも自分で作ろうとしない人は、そもそも山に向いていないかもしれない)

私がガイド講習を使ったのは3回。 

 1回目: まったくの初心者 アックスが何かも知らない。アイゼンも持っていない
 2回目: 師匠がリードするルートにビレイヤーで行くことになり、ビレイ練習
 3回目: 先輩が凍傷になり、パートナーがいないため、クライミング練習 

だ。

初めてリードをビレイするとき・・・まさか初心者の私のビレイで登れ、と先輩に”命がけいっちょお願いします”と言う訳にも行くまい・・・。

・・・と考え、保科ガイドに「リードのビレイをさせてほしい」と頼んで2度目の講習に出かけた。

ガイド講習は、利用者がどのような目的を持って利用するのか、はっきりとお願いするのが大事なことだ。

先方は山の大先輩なので、ちゃんと意図を分かってくれる。3回目なんてただ登りたかっただけだったので、たまたまいた講習生の人とパートナーを組んで上り下りするだけでガイドさんは左うちわだったが、それでも夜になってナイターになるまで登らせてくれた。

■ 教わって当然という態度をしないことが大事

この年輩の方は、アイスシーズンだけに全資金をつぎ込み、何年もかけて技術を習得したそうだった。つまり、私が実力者と半ば弟子状態で来ているのが羨望だった、というわけなのだろう。

その気持ちは分かる。私自身も、基本的な登山技術を習得する講習会に1年かけて出て、30万円ほど出費したし(山小屋バイトで補てん)、アイスも自分のお金で保科さんでデビューしている。レスキュー講習も多くの人は、会からの助成金で出ているが、私は自腹だ。

地図読みに至っては、自分の金で出た講習会を、会に伝達講習しているが、会からは一円も出ていない。

自分が連れて行く側に回ったら、

自分が有料で教わったことはみな、無料で教えなくてはならない

のだ。だから、今回の私のようにまだ初心者に毛が生えた状態で、ベテランと組んでいる人が羨ましくて当然だ。それに、昨今、無料で教わって当然と思っている新人が多い。一言、言いたくなる気持ちもあるだろう。

しかし、私は後輩には、見返りを要求することはしないつもりでいる。恩着せがましくもしたくない。

あくまで対等のパートナーとして遇することが、その人の成長に資すると思うからだ。

それは責任感の問題ではないだろうか?

ついでに言えば、自らの道を自ら歩み、自分で学んできた人しか、結局はパートナーとして残らないものである。

今まで一緒にアルパインに行って快適だった人は、単独で冬山の一般ルートくらいは平気な人ばかりだったからだ。それに最低限ビレイができない人は、連れて行けない。

連れて行くのは、半ば自分のためだと思っているが、本当に損した気分にさせられる人もいる。そういう人とは二度と山行を共にしない。たとえば、冬ウエアや冬靴まで貸して連れて行った、初回の南沢小滝など。あとで靴をねだられた。その靴は、小屋バイトでねん出したお金で買ったもので新品。自分は古いほうを履き、新品を貸したのだ・・・。ただし、そういう段階だった人が山を続け、自分のレベルにあった山をしているのを知るのはうれしい。

ちなみに日本で一番高額な、保科ガイドのガイド山行で行くと

 南沢小滝・大滝 1日17000円 2日間30000円
 岩根 17000円

である。誰もパートナーがいなければ、甘受しなくてはならないコストとなる。

■ ビレイミスを謝らないビレイヤー

今回は女性がビレイしているリードのビレイで、隣のパーティの男性クライマーが、盛大に落ちていた。

幸い、あまり高さがない段階で落ちたので、「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と、再度リードトライしていた。(エライな~!)

驚いたのは、ビレイヤーが、まったく謝罪をしないことだった。

いつから、こういう世界になってしまったのだろうか?

こうした例は、今回が初めてではなく、自分の会でも同じ例があった。

ある先輩をビレイしている人に、ビレイ位置のまずさを私が指摘した時も、無視された。目の前で口頭で指摘し、なおかつ、隣のパーティも同じ危険を指摘したのにもかかわらず、である。無視した人は会の若手。

ビレイヤーはクライマーの命を預かっている。

つねにきちんとビレイできているか下から監視してやらなくてはならない。

クライマーが落ちたとき、墜落を止めることができなかったら、それはビレイヤーのミスだ。

■ フォールライン以外でビレイする

アイスのリードでは、決して落ちれない。

しかし、それは、ビレイヤーが当てにならないから、という理由であるべきではない。

ビレイヤーもクライマー同等、命を守る必要があり、落氷を避ける結果、通常の岩場よりは離れたビレイポジションに立たねばならないからだ。

その点を理解せず、単純に1ピン目が遠いだけで、落氷の通り道でビレイしているのに驚いた。

落氷を避けるために、ビレイ位置を妥協しているのがセオリーだからだ。

ビレイ位置は、フォールラインから外す、というのが基本だ。

考えるに、おそらく、そのことが理解できていないか、教えられていないのだろう。

■ 行く人によって同じ場所も危険になる

そのようなパーティと行くと、同じ南沢大滝、同じライン、同じ日であったとしても、その場所は危険な場所になってしまう。

つまり、危険か危険でないか?は、一緒に行く人の危険予知力に因るのである。

■ リードの写真

全体像を取ることができなかったのだが、以下2つの写真で、ダブルでリードしているパーティのリードのランニングの取り方や、ビレイ位置は、危うさがない。きわめてオーソドックスにきちんと、リードし、ビレイされている。

が、奥のクライマーになるとそうではない。アイスでは特に両者の見極めが、微妙すぎて見極めづらいが、現地で見れば、かならず分かる。

奥のクライマーのリードラインは、ロープが地面に着いてしまっている。つまり出過ぎだが、今いる位置ではどうしようもないだろう。下がテラスになっているので、2ピン目をとっているが、早急に3ピン目を入れたいところだ。




2枚目をみると、

奥の、だらりんビレイ
手前の、きちんとビレイ

の差が良く分かると思う。このような状態の時には、緊張していないといけない。

■ フォールライン

今回は、(というか南沢大滝ではいつものこと、であるが・・・)落氷が怖かった。というのは、ほとんどの人が、フォールラインでビレイするからである。

ビレイするとき、フォールラインを外す、ということは重要なことだ。

つまり、脇に逸れればよいのである。もちろん、登っていたらクライミングラインが変わってしまい、結果、落が落ちる位置になってしまうこともある。それでも氷の陰や、凹凸の凹角に立たないなど、最初の工夫でしていれば、大きな落は来ないことが多いだろう。登山は確率を下げつつやるものである。

今回、氷が緩んだ午後の早い時間帯に、ブロック塀のブロック大の落が起り、それがビレイ準備中のビレイヤーを直撃し、ヘルメットに当たって、「ぼこっ!」とにぶい音を立てた。それはビレイ準備していた手にもあたったようだった。

あたった人は「ちょっとー。トップロープなんだから、もっと落とさないように登ってよー」と上に叫んでいたが、登っているクライマーは無視していた。しかも、下りてからも謝る様子はなかった。

そのことにまず驚いた。

が、当たった側にも責任の一部はあったようだ。トップロープのビレイだったが、ロープの長さがギリギリで短いので、クライマーが登るまでは、その大滝全体の一番の凹角に立たないではいられないのだった。

やはり長いロープが南沢大滝では必要だ。

■ 南沢は混雑を避けるべし

・・・というわけで、正直言って、自分のクライミングどころではなかった。

それは、初めて行った南沢大滝でも同じだった。やはり、南沢大滝は空いている時限定にしなくては、クライミング練習にさえもならない。

クライミングに関しては、今回は朝かなり冷え、朝一リードのシビアさが出た。手が寒さでしびれるのである。

つまり、初心者のリードクライミングデビューには、南沢大滝はかなり向かない。

やはり、手のかじかみなどのリスクがない、美濃戸口の氷瀑など低標高の場所が適しているだろう。

また混雑により、リードのリスクは非常に高い。ビレイヤーとしても、落による怪我が起るリスクが高い。

■ ムーブ逆戻り

自分のクライミングは、またムーブが逆戻りしていたが、まぁそれは最初の一登が長いのが、ダメだからだ。

岩でも、アイスでも、最初の一登が長かったり、難しい課題は、私のアップには向かない。

4級の易しい課題が私のアップには向いていて、しかもパンプする前に降りるようにしないといけない。

前回も、5.10Aクラックをアップなしで触ったら登れなかった。登れなかった回を振り返ると、かならず、いきなり限界グレードなどであって、アップがない。

私のアップには、まだ5級以前が向いているのだ。そうすると、調子が上がれば、10台前半まで行ける、という感じ。

本当は、調子が上がっていれば、リード練習まで進みたかったので残念だった。リード練習はベテランビレイヤーの時にしかできないからだ。

次回のリード練習を考えて、一番リードしやすいラインで、スクリューの回収をしてみたが、あまり難しさは感じなかった。

ただ、女性はアイスに関しては、リードするグレードと、トップロープで登れるグレードの開きが大きい。それだけリード負担が岩より大きいということだ。

というわけで、一般の女性よりも腕力に劣る私は、もう少し高グレードをトップロープで登れるようになってから、リードへ進み、それも小滝程度でスタートすべきと思う。

成果としては、落とさない登り。最終的にはほとんど落とさないで登れた。(が、まぁ午後遅い時間帯になって、すでに多く登られて段々が出来ていたという事情にもよるので、実力のためではないかもしれない・・・(笑))

■ シャンティ

帰りは、車を止めておいたJ&Nで、ケーキセットを食べて終わった。楽しい?南沢大滝だった。
とりあえず、第一目的の、残置が回収できて良かった。

それに、実力者と一緒だったので、独占して申し訳ない感じだった。

正直、とても恵まれた環境にある。シャンティ(感謝)。

洋ナシのタルト

それを独占しては、世間に対して強欲と非難されても仕方ないと思うので、周囲にも声はかけている。が、9人に声掛けして全滅。

まぁ、チャンスとは見る目がある者にだけ見えるもの。チャンスをチャンスと見出す、というのも一つの才能ではある。価値観が確立していないと、チャンスがチャンスと映らない、と言うことも言える。

私には、安全についてよく知っている人と登れ、その様子を盗めることは大チャンスである。

■ まとめ

・アイスではフォールライン(凹角であることが多い)に立ってはいけない 

・ビレイヤーは、フォールラインから、右か左にそらし、なおかつ、もっとも近い位置でビレイする

・1ピン目を取るまでは、ゼロピン目を取っておくこと

・南沢大滝では、80mの長いロープか、2本のロープが必要

・南沢大滝の核心は、混雑と混雑による未熟なクライマーによる落氷

・リードクライミングデビューには大滝は向かない。

・午後の南沢はアイスが緩むのでトップロープで

・氷はバチ効きであった



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