Mar 17, 2016

南沢小滝・大滝&角木場の氷柱

■ 視野を広げる山行

今冬知り合った0さん。クライミングがとっても上手。今シーズン中に、南沢大滝を経験してもらいたい…。・・・けれど、私自身はまだリードできない。

まぁ、リードできないところに行くべきではない、時期尚早、とも言えるのですが、かと言って、垂直もやらないでは、クライミング技術が向上できない・・・。それに視野も広がりません。

人工氷壁や南沢小滝って、多くの人が登って、段々がついてしまい、クライミング自体が簡単になっているのです。

なので、岩根や小滝で、自信をつけてしまって本番に行ってしまうと、”ああ勘違い・・・(汗)”となり、超危ないです。

本番では、小滝と同じように見える垂直の滝でも、誰も刺していない。いわば、カンニングなし!なので、岩根や小滝程度で培ったグレード感覚で出かけてしまうと、痛い目を見てしまいます。

それは師匠にも言われていました・・・「楽勝で登れったって?ふーん。段々のついている小滝程度ではね~」 まさしくその通り・・・(^^;)。

Oさん、今年アイス元年で、アイスのルートも経験したし、あとは大きな氷を体験するだけかな~と思っていました。

それに、ベテランとの山行は、単純な練習以外にも色々と学ぶことがたくさんあります。例えば、

 ビレイヤーの位置とか、
 中間支点の取り方とか、
 ゼロピン目の取り方とか、

・・・というので、だれか大滝に連れて行ってくれないかな~と、方々に声をかけていたら、K田さんが誘ってくれました。やったあ~!

■ 前日の人工壁

Oさんは電車なので始発に乗っても、南沢到着が昼前になってしまうので、前日移動です。せっかく来てもらうので、少し早めに来てもらうことにしましたが、あいにくの雨。

十二ヶ岳の岩場で、マルチピッチのコールを教えようと思っていましたが、雨なので人工壁。被った壁がやりたいということなので、前回できなかった5.10aを復習。まずはアップでトラバースをやってもらいます。

私もトラバースで持久力を付けているところで、辞めてしまったんだよなぁ・・・。トラバース課題を何度もやっていると、力を抜くことを覚えるらしいのですが、おと年の夏は調子よかったけど、もうやらなくなってしまった・・・。反省が必要です。

その後、被った壁をリードしてもらいました。が、途中敗退なので、”極地法”で(笑)。 極地法というのは、私たちの間の言葉で、リードできないときは、そこで降りて、次の人がリードする方式。じわじわ高度を上げる(笑)って意味です。

とりあえず被ったところで懸垂練習をした方が良いので、途中でリード&フォローに替え、懸垂下降のセットを確認。2度目はカラビナ懸垂を教えました。最後はビレイヤーの自己脱出をやって終了。

・リードフォロー手順おさらい
・空中懸垂 (バックアップを付けて降りる)
・カラビナ懸垂
・自己脱出

こういうのは、器具との相性もあるので、あらかじめ本番前にやってみていることが大事ですが、人が多いクライミング練習の時は、終了点に二人で上がって、のんびりロープアップしている場合ではなく、なかなか機会が作りづらいので、空いている平日の時間にやっておくのが得策です。クライミングだけなら、一人でもボルジムで練習できますしね。

■ 今シーズン初の冬!

翌日は、なんと!雪! やっぱり・・・甲府で降った雨は、山では雪ではないかと心配していたんです。

我が家のラシーン君は先日の南沢小滝山行でお亡くなりになり、現在、車がノーマルタイヤのジーノ君しか今いない・・・日野春を越えたあたりから路面に雪が出始め、小淵沢インター前の坂道では、発車が核心・・・(汗)。

急遽、電話。「道の駅小淵沢で拾ってください~」 鉢巻道路は雪でした。そして、山は冬日でした。

今シーズン初!というくらいの積雪量。美濃戸口で10cm 小滝大滝で40cmのふかふか新雪。

余談ですが、この日、阿弥陀南稜で雪崩で死亡事故が起きました。ガイドパーティが率いる3人パーティで一人死亡。

八ヶ岳では、積雪が40cmを越えたら、新雪雪崩を心配しないといけません。特に地形的に危険な所にいないように。中岳沢や赤岩の頭下部、三叉峰ルンゼなど、雪崩れ地形は避けましょう。

南沢は小滝から先はノートレースでした。

■ 南沢小滝

南沢小滝では、基本の2点支持でのクライミングを教わりました。各自普通のラインを1本づつ登り、アップ。

その後、右のラインの難しいほうへ・・・ここは5.9しかないそうですが、確実にムーブが必要そうでした・・・。70mと長いロープだったので、1本でトップロープしながら、となりで同じロープでリード。

セミチューブと言うアックスは、ピックが半分に切ったチューブになっているから、セミチューブって言うんですね。やっとわかった。

氷が落ちなくて良いのだそうです。古いアックスの代表のように言われていますが、今でも、フリーソロでアイスを登るようなギリギリクライマーには好まれているアックスなのだそうです。





正しいビレイ
ムーブが面白いライン 5.9
■ 南沢大滝

昼ご飯を食べて、大滝へ移動・・・誰も来ていなくて、トップはラッセルでした。張り切るOさん!頑張って~!

ラッセルも、下に氷があるほうが潜らなくて歩きやすく、踏まれていない側面のほうなど、腰まで埋まる・・・



大滝では、ベテラン2名がリード。私はビレイを担当しました。これはとても勉強になった。


≪ビレイ位置の決め方≫

 ・クライミングラインを考える

 ・クライミングラインのフォールラインから外れた位置(落氷があるところには立たない)で、もっとも滝に近い位置にビレイポイントを作る(ハンギングすること)

 ・1ピン目を取るまでは、ゼロピン目を取る

ランニングの取り方に注目
先日峰の松目に行った時、F8の弱点の中では、強い点である凸を登るために、凹角にビレイポイントを作ったのですが、安全を考えた位置関係では、正解を選んでいました。

しかし、その後ビレイポイントを後退させたのですが、その位置はやはりリードするには向かない位置でした。トップロープでの確保地点としてはOKでしたが。

話を大滝に戻しますと、大滝は何度か来ていますが、以前、フォールラインに背を向けて立っていた先輩が、レンガ大の落氷を頭に受け、ヘルメットが割れていました。私はその割れた氷の片割れが、肩に当たって、帰ったら、あざになっていました・・・。

大事なことは、フォールラインに立たないということです。

私を含み、新人さん二人はトップロープで。私は今回は2登しましたが、とくに苦労せず登れました。ただ、この日は冬日で気温が日中も低く、寒気が強かったので(-15度)、テムレスでは指先が冷たくなり、またパンプすると指が凍傷になりそうなくらい痛かったです・・・。テムレスではダメな日でした。ちゃんと皮のグローブももっていたのですが・・・。手首の当たりにホッカイロを張るとよいそうです。

この日は、私が夜20時からレッスンを持っており、甲府に仕事で帰らなくてはならなかったので、16時下山。17時美濃戸口。18時半甲府。

ジーノで帰ると時間がかかるので、送ってもらいました。ありがとうございました☆

≪クライミングメモ≫
・80mの長いロープがあると良い
・ギリギリなので、トップロープのビレイでも末端を結んでおくこと(ローワーダウンで抜けたら最悪)

■ 角木場の氷柱

氷柱

翌日は再度八ヶ岳へ。美濃戸口、角木場の氷柱です。

ここは去年、師匠が私のリード練習に選んでくれた場所の奥地です。角木場の氷柱は、トップロープを張るのが核心です。TRを張るのに、懸垂か、確保が必要です。それは、隣のエリアも同じです。去年ちょっと苦労して師匠がトップロープを張ってくれたのに、私は氷柱全部は登れなかったんですよね。

角木場は、ガイド山行でも使われた後らしく、トップロープを張るために、フィックスが張り巡らされていたそうです。

ここは落ちたら一巻の終わりですので、懸垂しながら行くのがベターです。こういう用途の懸垂では、センターマークがあるロープが便利です。

懸垂で川底に降り立ち、そこから登り始めます。

落ちていたツララ 机大

≪氷柱登りの注意点≫

・落ちそうな弱弱しいツララは、あらかじめ落としてしまいます。
・その際は、頭上で叩かず、自分よりツララが下にある状態でツララを落とします。
・大きな氷柱も気温が上がれば、いつか崩落します。
・その時間帯は、13時~14時の間が最も確率が高いそうです。
・夕方になりまた冷えれば、登れる
・トップロープで登ること
・確実になるまでリードはしないこと
・ビレイ位置は後退すること(非常に大きな落がある。今回も氷だけでなく岩も落ちました)

各自3本づつ・・・念願の凸型氷柱ですが、上部がかぶっていて、易しいラインでも5.10A、かぶっていると、5.10bかc・・・完全にぶら下がるので、腕力の問題になります。

■トップロープ

トップロープクライミングは、カンタンと言われていますが、トップロープでも振られるという問題ががります。

今回は登りたかったのは、支点より、右のライン。「張るとフラれるから緩めに出していますよ~」と声をかけていました。

そもそも、トップロープで張り気味は嫌いなほうです。しかし、この氷柱にフラれ止めのアイススクリューを打つには直上の氷が悪く・・・アックスを一撃すると落ちる落ちる・・・氷が落ちます。

それに振られるので、思い切っては行けないし・・・。で、ラインを変えました。パツパツにタイトにトップロープで引いても、アイスに向かい合うように引かれるライン。氷柱の側壁です。こうすると、ロープを張り気味にしても大丈夫です。それでもけっこう氷がデリケートで登るのは大変でした。

フラれ止めを打つのも核心ですね~

■ 3ラインづつ

1本目、私はパンプしてしまいました。やはり一日の一本目から、かぶっているところだと動きが悪い。その上、かぶっているので、パンプが来やすい。しかも氷が固く、足もハズれ、落ちること3回(汗)。

いや~これだからトップロープでないと。それで、これは足が課題と感じました。またアックステンションでレストして、腕のパンプを抜く技は5級へ進む段階では必須ですね。

でも、これが5.10aに過ぎないのは分かった。腕にくる、かぶった核心部は、ほんのちょっとで後は足で立てるからです。

2本目は、フラッギング、ヒールフック、ステミングもあり、かなりアルパイン的で面白いラインでした。これはアックステンションでのレストは1回で済んだ。

3本目は、もう氷が落ちそうで、冷や冷や・・・氷の後ろに透けたところが見え、水が流れている!フッキングで掛けたところが、抜けること、抜けること・・・。怖くなった・・・。

昼過ぎに氷柱登りは終わり、H&Jでスパゲッティを食べて解散としました。(食事すると駐車無料)

楽しく勉強になるアイス二日間でした。

≪クライミングメモ≫
・日が当たらないゲレンデが良い
・70mロープが必要


■ まとめ

南沢大滝・小滝は、四級~Ⅴ級の課題です。四級でしっかりリードできるようになることが先決ですが、そのためには多少の垂直=5級の経験も必要です。

4級ではムーブは正対でなんとかなります。フラッギングを始め、2点支持のムーブは、あれば楽に登れるが、なくても登れます。それより確実に落ちないことを身に着けるのが四級の氷です。

一方、氷柱は確実に5級より上です。6級の氷となるため、確実に二点支持のムーブがあるほうが、楽ができますし、確実性も高まります。難しい氷で、身体能力とトレーニングが必要です。

どちらかが欠けても危険ですので、きちんと登れるようになってからしかリードは無理です。

考えてみれば、峰ノ松目沢F8は、小滝程度の高さで、氷柱でした。しかも取り付いてみたら、とても堅くて、あまりアイゼンの蹴り込みで刺さらなかった・・・ので、敗退は正解でした。

今回は、
                         
 新人 → 初めての大滝で大感動!
 アイス3年目→ リードの勉強中 ふむふむ~ & なるほど~
 ベテラン(20年) → リードを実践中 場数!
 ベテラン(アイス歴35年)→ 軽いゲレンデで、のんびりリハビリ~

と、それぞれの課題が上手く組み合わさって、皆が満足できた山行でした☆

一番頑張ったのはベテランなんですが・・・(笑) 新人さんもテンションにはなりましたが、ガッツを見せてくれました。

私も、クライミングは、岩もやる前に、南沢大滝が初めて。当時は”テンション”という言葉も知らず、トップロープの意味合いも分かっておらず、落ちたら死ぬ~と、思ってのぼっていたんですよね~(笑)

初めて1登目で、上り詰める前に落ち、失意で降りてきたら、先輩が優しく、「テンションって言ってもいいんだよ~」と言ってくれて、ビックリ仰天・・・。テンションって発想自体がなかったんですよね。

3登目で上まで登ったのですが、登れた時には「登れた、登れた」と皆が喜んでくれましたっけ。

そんな程度が新人の常で、体全体が力みまくっていたので、帰ったら、超ぐったりしていました・・・今は、2日連続で登っても、まだ登れそうです。

上手になったのではなく、ギリギリになる前に辞めるようになっただけ・・・のような気がしないでもないです(笑)。

■ 関連サイト

連れて行ってくださったK田さんのサイト

かかとにもツメがあるアイゼン



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